「いつもの練習なのに、最近はすぐに疲れてしまう」「前は走れていた距離が、つらそうになった」「練習を増やしているのに、調子が上がらない」
お子さまにこのような変化があると、「体力が足りないのかな」と考えることがあるかもしれません。
しかし、疲れやすさや息切れの背景には、鉄不足や貧血が関係する場合もあります。練習量を増やす前に、食事や体調を振り返ることが大切です。
今回は、成長期の選手と保護者に向けて、鉄分の役割、家庭でできる食事の工夫、受診の目安を紹介します。
鉄は、酸素を運ぶために必要な栄養素です
鉄は、赤血球に含まれる「ヘモグロビン」の材料になります。ヘモグロビンは、肺で取り込んだ酸素を全身へ届ける役割を担っています[1]。
鉄不足が進んでヘモグロビンが十分につくられなくなると、「鉄欠乏性貧血」を起こすことがあります。酸素を運ぶ力が低下し、疲れやすさや運動のつらさにつながる場合があります。
また、鉄は筋肉での酸素利用などにも関わっています。持久系競技の選手に限らず、成長する身体に必要な栄養素です。
「鉄不足」と「貧血」は、同じではありません
体内の鉄が減り始めても、すぐにヘモグロビンが低下するとは限りません。まず蓄えている鉄が減り、貧血には至っていない鉄不足の段階があることも知られています[2]。
そのため、ヘモグロビンの結果だけで、身体に蓄えられた鉄まで十分と判断できるわけではありません。
ただし、疲れやすさだけで鉄不足を診断することもできません。睡眠不足、食事量の不足、病気など、ほかの原因も考える必要があります。気になる変化が続くときは、医療機関で確認しましょう。
成長期は、男女ともに気をつけたい時期です
成長期には、身体が大きくなることに伴って鉄の需要が増えます。食事を抜く、食べる量を減らす、肉や魚などをほとんど食べないといった状況では、必要な栄養を満たしにくくなります[2][3]。
月経がある選手は、出血による鉄の損失にも注意が必要です。特に、月経量が多い場合は医師へ伝えましょう。鉄不足は女子だけの問題ではなく、男子にも起こります。
「スポーツをしているから全員同じ量の鉄を追加する」という考え方ではなく、成長、食事、練習量、月経などを合わせて確認することが大切です。
家庭では、毎日の食事を組み合わせて考えましょう
鉄を含む食品には、赤身の肉、魚や貝類、大豆・豆類、緑の葉野菜などがあります。
食品中の鉄には「ヘム鉄」と「非ヘム鉄」があり、一般にヘム鉄のほうが吸収されやすいとされています。植物性食品に含まれる非ヘム鉄は、ビタミンCを含む食品と組み合わせることで、吸収を助けられます[1]。
例えば、次のような組み合わせが考えられます。
- 赤身肉のおかずに、パプリカやブロッコリーを添える
- 豆類を使った料理に、野菜のおかずを組み合わせる
- 食事に、みかんやキウイなどの果物を添える
これらは献立の例であり、この組み合わせだけで必要量を満たせるという意味ではありません。特定の食品を大量に食べるより、無理なく続けられる組み合わせを増やしましょう。
鉄分の前に、食事全体が足りているかも確認を
「鉄の多いものを食べさせなければ」と、おかずの一部だけに注目していませんか。
朝食を抜いている、減量のために食事を控えている、忙しくて食べる時間が取れないといった場合は、鉄以外の栄養やエネルギーも不足している可能性があります。
まずは、普段の食事と練習のある日の体調を、親子で数日振り返ってみましょう。食べられるものが限られる場合や、体重管理が必要な競技では、医師や管理栄養士に相談して整える方法もあります。
こんな変化が続くときは、小児科や内科へ相談しましょう
次のような変化が続く場合は、練習不足と決めつけず、小児科や内科へ相談してください[3]。
- いつもより疲れやすく、休んでも回復しにくい
- 同じ運動でも息が上がりやすい
- めまいやふらつきが繰り返しある
- 顔色が悪く、学校生活にも影響している
- 食事量の低下や月経量の多さが気になる
受診時は、症状が始まった時期、練習量の変化、食事、月経、使用中のサプリメントなどを伝えると役立ちます。医師が必要に応じて血液検査を検討します。
検査では、ヘモグロビンに加えて、鉄の蓄えをみる「フェリチン」などを確認する場合があります。数値は年齢や炎症などの影響も受けるため、インターネット上の基準と比較して自己判断せず、医師の説明を受けてください。
運動中に失神した、胸が痛い、安静でも強く息苦しい場合は、運動を中止し、速やかに医療機関へ相談しましょう。「貧血だろう」と決めつけて様子を見ないことが大切です。
鉄のサプリメントは、自己判断で始めないでください
鉄は、多くとればとるほどよい栄養素ではありません。サプリメントや鉄剤では、量によって吐き気、腹痛、便秘などが起こることがあり、過剰摂取も問題になります[1]。
「疲れるから」「チームメイトが飲んでいるから」という理由だけで始めず、まずは不足の有無や原因を確認しましょう。
鉄欠乏性貧血と診断された場合は、食事の見直しに加えて、医師の判断で鉄剤による治療が必要になることもあります。処方された薬は、自己判断で量を増減したり、中止したりしないでください。
スクオスジムでのサポート
浜松市のジュニアアスリート専門スクオスジムでは、身体の動きやトレーニングだけでなく、日々の練習状況や体調も伺いながら、成長期の身体づくりをサポートしています。
「最近、動きが重そう」「練習についていけなくなった」ときも、体力不足と決めつけず、生活や体調の変化を一緒に整理します。貧血などが疑われる場合は、医療機関での確認をご案内します。
診断や鉄剤の調整は医療機関で行い、その方針を踏まえて運動内容を考えていきます。
調子が出ないときこそ、頑張りを増やす前に身体の状態を確認しましょう。気になることがあれば、スクオスジム公式LINEからご相談ください。
参考文献
[1]National Institutes of Health(NIH), Office of Dietary Supplements. Iron: Fact Sheet for Consumers(2023年更新) https://ods.od.nih.gov/factsheets/Iron-Consumer/
[2]Clénin G, Cordes M, Huber A, et al. Iron deficiency in sports – definition, influence on performance and therapy. Swiss Medical Weekly(2015;145:w14196) https://doi.org/10.4414/smw.2015.14196
[3]Children’s Hospital Colorado. How Much Iron Do Young Athletes Need(2020年) https://www.childrenscolorado.org/just-ask-childrens/articles/how-much-iron-do-young-athletes-need/
※一般的な情報です。個別の診断・治療や復帰判断に代わるものではありません。参考文献確認日:2026年10月24日。